ぶっちゃけ自炊ってどうなのよ?

この記事は次の人を対象に書かれています。

  • 部屋を片付ける際に、処分に困る本が出てきた人
  • 著作権に興味がある人
  • 『自炊カフェ』が許せない人

部屋の片付けをしていた時、絶対に捨てない本と要らない本はすぐ判断出来るんですが、いつかまた読むかも…という判断に困る本がいくつかあって、どうしようかと思い悩んでいました。
その時LifeHackerに自炊(書籍をドキュメントスキャナで電子化する行為)を勧める記事を発見し、そういえば法律的にどうなのだろうと思って調べてみました。

  • ぶっちゃけ自炊って合法?

自炊行為は文理解釈上、常に複製権の侵害を構成するおそれがあります。複製権とは読んで字のごとく、著作物の複製を行う権利のことで、通常は著作者が専有します。
ただし上記複製は、一定の要件を満たすと私的使用のための複製として、例外的に著作権者の許諾なく複製することができます(三十条柱書)。
なので、ほんとは複製なんてしちゃダメだけど、「私的使用のためだ!」と念じながらやれば例外的にオッケーだよ、ということです。
CDなどをPCにコピーしてよいのも同じ理屈ですね。

  • 著作権って何?何をしちゃいけないの?

そもそも著作権とは、著作物に関して定められた著作者の権利やそれに隣接する権利であり、文化の発展に寄与することを目的に設定されています。
なお、著作物は、『思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。』(二条一項)として定義されています。

何をしちゃいけないかという点について、「そりゃあかんやろ!」と思わせる行為は色々ありますが、基本的には「法律上の違法行為に該当する行為であるか否か」のみが論点となります。つまり、どんなに非人道的でも、著作権法上の違法行為(侵害行為、侵害とみなす行為)に該当しなければ、著作権侵害にはなりません。逆もまた然りです。

僕が決めた訳ではないのですが、合法です。レンタル料金に著作権料が含まれているというのがその理由です。JASRACさんの公式見解です。
ただし、コピーガードがかかっているものに関してはこの限りではありません(三十条二項)。上に挙げた私的使用のための複製の例外、つまり例外の例外となりますので、侵害のおそれを有します。

ここまでは安全面に配慮して書いています。信じてもらって大丈夫です。
これ以降は鵜呑みにせず、自分で判断して下さい。できれば、近くの弁理士にお金を払って「仕事として」相談して下さい。

  • 自炊した本の実物を、捨てたり売ったりしていいの?

捨てる点に関しては、問題ないと思われます。「消尽」の理論ですが、購入価格に著作権料が含まれているためです。
複製後に売る場合に関しては、著作物の譲渡後に複製物を所持していていいのか?という問題になります。これに関しては、「特に規定がない」としか言えません。なので、多分大丈夫なのでしょう。僕も分かりません。
ただ、プログラムの複製物に関しては、『滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない』(四十七条の三)とあるので、複製物を破棄する必要があります。この反対解釈としても、自炊データは残しておいてよさそうですね。
しかし、正規に購入したPCゲームといえども、捨てたり売った後はコピーは消さなきゃいけないってことですね。気を付けましょう。

  • じゃあ、中古で買った本を自炊していいの?

中古で買った本であることを理由に私的使用にあたらなくなることはないので、いいんじゃないでしょうか。
上に書いたのと同じで、最初の購入時に権利は消尽していると考えられます。あんまり納得はいきませんが。

  • 自炊カフェって本当に合法なの?

文理解釈上、ただちに違法であるとは断言できません。「違法っぽい」が通説となっています。
自炊カフェを合法とする人は、「複製の主体がカフェでなく個人である」ことにより、その複製を私的使用のための複製だと主張しています。
一方違法とする人は、事実上の主体がカフェであるとする、いわゆる「カラオケ法理」を主張しています。「クラブキャッツアイ事件」の判例で示されたもので、まぁ詳しくはググって下さい。
ただし、この件に関してカラオケ法理が適用出来るかにも議論の余地があり、そもそもカラオケ法理自体も全ての人が妥当だと判断している訳ではありません。趨勢はおおむね賛成、といった感じです。
ぶっちゃけ、判決がでるまで分からないですね。

そもそも著作権法は、本を電子的に複製するなどという状況を想定して構成されていません。なので、現状と合わない部分があるのは当然と言えます。
ドキュメントスキャナより歴史の長いテレビゲームについてすら、十分な権利保護がされているとはとても言えない状況なのです。
改正という形で現在に追いついていくのでしょうが、その間は個々人が法もモラルも遵守して行動することをお勧めします。

とにかく、自分の持ってる本を自炊するのは問題なさそうなので、僕は部屋を片付けます。